労働相談Q&A

社会保険労務士が働く人と雇用する側の労働関係の法令について分かりやすく解説します。

  • Vol.31 有期雇用社員でも育児休業がとれますか

    質問

    有期契約社員として入社して1年になりますが、この度今年12月に出産予定になりました。雇用期間は来年の3月末までですが、有期雇用社員でも育児休業がとれますか。また休業期間はいつまでになるのでしょうか。

    ポイント

    ・令和4年4月1日に、育児介護休業法が大きく改正されました。
    改正後は、育児休業をすることができる有期雇用社員の範囲は「育児休業申出の時点で、子が1歳6か月に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでない」者とされています。
    この条件を満たす場合、有期雇用社員も原則として育児休業を取得できますが、会社が「育児休業の対象者を限定する労使協定」を結んでいると、育児休業の取得対象とならないこともあります。

    解説

    ポイントに記載したとおり、労使協定がある場合、会社は以下の有期雇用契約者が申し出た育児休業を拒むことができます。
    ①入社1年未満の社員
    ②育児休業申出の日から1年以内に雇用契約が終了することが明らかな社員
    ③1週間の労働日数が2日以下の社員
    自社で、このような労使協定が締結されているかどうかを確認してみましょう。

    会社で労使協定が締結されていたとしても、相談者の場合、①の「入社1年未満」はクリアしています。問題は、②の「申出日から1年以内に雇用契約の終了が明らかかどうか」という部分ですが、会社から明確に「雇用契約の終了」を知らされていなかったり、または契約書の更新の記載が「更新することがある」になっている等、宙ぶらりんの状態であれば、更新の有無も含めた雇用期間の満了日を早めに会社に確認しましょう。

    育児休業は、原則として子が1歳を迎えるまでの休業です。社員の職場復帰を前提とする制度ですが、有期社員の育児休業期間が「雇用期間満了まで」とされるような場合もあります。会社の育児休業制度を早めに確認し、計画的に行動できるよう準備をしておきましょう。また、復帰を見込む場合、育児休業終了後も働く意思があることを会社に明確に伝えるとともに、責任をもって休業日までの仕事を進めることが大切です。

  • Vol.30 LGBTとハラスメントの関係について

    質問

    最近、LGBTについて、社内で話題になることがあります。
     職場にも、LGBTではないかと感じられる社員もいますが、そのことについて、「うっかりするとハラスメントになることがある」と言われました。なぜ、それがハラスメントになるのか、また、どのように対応すればよいかについて、教えていただきたいです。

    ポイント

    ・LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとしても使われることがあります。

    解説

    日本におけるLGBTの割合は、現在では約3%〜10%と言われています。
    LGBTとハラスメントの関係では、次のことを理解しておく必要があります。
    ⑴ カミングアウト…自らの性のあり方を自ら誰かに話すこと
    ⑵ アウティング…本人の性のあり方を、同意なく第三者に暴露すること
    ⑶ ゾーニング…性的指向と性自認の個人情報の共有範囲をコントロールすること
    ハラスメントの関係では、自ら性のあり方を誰かに話す、カミングアウトは自分らしくありたいことの表現とする人がいます。ただ、
    ・人格を否定するような言動は、「精神的な攻撃」当たります。
    ・⑵のアウティングは、「個の侵害」にあたります

    性的指向(どんな性に恋愛感情を抱くのか、どんな性に性的感情を抱くのかといった要素のこと)、性自認(自らが認識している性のこと)、を理由に仕事から排除した場合も、パワハラに該当するとしています。
    LGBTは、病気ではないため、治すということにはなりません。ただ、少数であるため、一般的に違和感を持つ人は少なくありませんが、他の社員と同じような自然な対応で接するようにして下さい。
     職場での配慮として、男女共用の個室トイレや多目的個室トイレなどの設置、また「だれでもトイレ」などの利用しやすいネーミングの工夫も必要でしょう。

  • Vol. 29 退職後の傷病手当金と失業保険

    質問

    心療内科に通院しながら働いていましたが、2か月前から休職となりました。
    現在は傷病手当金を受け取りながら休職を続けています。傷病手当金は1年6か月まで受け取ることができると聴きましたが、退職後の傷病手当金を受け取る条件と 失業保険はどのようになるのか教えて下さい。

    ポイント

    退職後に傷病手当金を受給する要件、療養中の失業給付延長の要件は次のとおりです。
    ① 退職日までに1年以上、継続して健康保険に加入していること。
    ② 退職時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
    ③ 失業給付は、病気療養で労働することができない場合は、4年を限度として受給期間を延長する制度がある。

    解説

    療養のために休職しても経済的不安がストレスになり、回復に支障をきたしてしまいます。そのために傷病手当金は、条件を満たせば退職後も受け取ることができます。
    1. 退職後の傷病手当金受給要件は上記のとおりですが、傷病手当金は、通算して1年6カ月まで受け取ることができますが、傷病手当金と失業給付は同時に支給されることはあり得ません。
    傷病手当金は、会社に在籍している間は、社会保険料の支払が必要ですので、毎月会社の指定口座への振込が就業規則に定められていることが多いです。会社に確認しましょう。

    2.失業給付は、失業、「労働の能力を有する者」が職業に就けない状態にあることが支給要件なので、療養中で仕事につくことができない状態では、失業給付は受け取れません。ただし、失業保険には原則として離職日の翌日から1年間という受給期間がありますので、長期間病気やケガが治らない場合は、受給期間を延長できる制度(4年を限度)があります。
    失業給付の受給期間を延長する要件は次のとおりです。
    ① 受給期間内に病気やケガにより、引き続き30日以上職業に就くことができない期間があること
    ② 本人が申出をすること 
    延長の期間などについては、ハローワークで相談するのがよいでしょう。
    十分に療養して復職できるよう制度の利用をお勧めします。

  • Vol.28 会社からの昇進打診を断ることができますか

    質問

    正社員として勤務15年になります。毎年4月に昇進・昇格の発表がありますが、今回上司から、係長昇進についての打診がありました。
    仕事や職場は充実していますが、現在小学生の子育て中で、係長の業務責任を果たせるのか不安があります。
    会社員として、会社の命令を断ることができるのでしょうか。

    ポイント

    ・会社命令であっても断ることはできますが、会社が昇進に対して、どんな役割を期待しているのかを確認することが重要です。
    ・そのうえで、現状では昇進を引き受ける状況でないことについて上司に説明し、
    相談することが必要です。

    解説

    会社は、業務の都合や将来の人材育成を検討して昇進の人事を行います。これまでの働きぶりなどを評価して人選していると思われます。人事異動は会社の命令でもあり、就業規則に「正当な理由がなければ拒むことはできない」と記載されることがあり、引き受けることが前提になっていますが、断ることができない訳ではありません。断る前に、せっかく会社が適任だと判断して昇任を打診していますので、「期待する役割や業務内容の責任範囲」を確認して判断するのが良いと思います。

    昇進したくない一般的な理由として
    ① 現場で仕事することが好き ②部下の管理やマネジメントに自信がない ③家庭と管理職業務両立が難しい などがあります。

    昇進を断るデメリットとして
    ① 給料が上がりにくい ②後輩の上司の部下になることがある ③家庭環境の変化で管理職の条件ができたときに再度機会を得られない ④後輩への影響(昇進を断る前例となる) などがあります。

     繰り返しますが、会社命令であっても、昇進を断ることはできますが、せっかくの機会ですので、「どの範囲ならできる」「すぐには引き受けられないが時期が来たら引き受ける」「もう少し経験を積んでから」など、会社と充分に相談して判断することをお勧めします。

  • Vol.27 働きながら不妊治療を続けたい

    質問

    現在、働きながら不妊治療を続けています。通院のために、仕事を休むことも多く、職場の上司や同僚に気を使います。上司は理解を示していましたが、期間が長くなると、同僚からの協力が得にくくなっているように感じます。
    不妊治療で利用できる行政の支援策や会社の取り組みなどについて教えてください。

    ポイント

    不妊治療支援のポイント
    1. 国の方針で不妊治療も保険適用されます。(令和4年4月から)
    2. 厚生労働省で「不妊治療マニュアル」「不妊治療ハンドブック」を発行しています。
    3. 不妊治療の職場環境を整備する企業に「不妊治療両立支援コースの助成金」が利用できます。

    解説

    仕事をしながら不妊治療を続ける多くの人は、両立できずに仕事を辞めたり、もしくは不妊治療をやめた、雇用形態を変えた等、途中で断念する人も少なくありません。理由として「精神面・体力面で負担が大きい」、「通院のために職場を休むことが多い」、「経済的負担が大きい」となっています。相談のように不妊治療は、通院時間や費用とともに職場の協力が必要になります。

    1. 国の支援策としての、①妻の年齢が43歳未満であること。②1回30万円 ③1子ごとに6回まで(妻が40歳以上43歳未満は3回まで)が、令和4年4月から保険適用となりました。

    2. 事業所への支援としては、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)や働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)があります。企業は「働きやすい職場づくり」によって不妊治療者の支援を行っています。例として、不妊治療のための半日年休や時間年休の導入、テレワーク制度、長期休職制度、不妊治療で退職した社員の再雇用制度などあります。また、職場への協力依頼として、医師から事業主へ「不妊治療カード」を発行してもらうこともできます。
    このような支援策を利用するためには、職場の理解と同僚の協力が必要です。あわせて企業と労働者が協力して、制度を利用しやすい風土づくりも重要です。

    「不妊治療専門相談センター」(県の看護協会内)への相談もお勧めです。一人で悩まずに、支援策を活用しながら会社への協力依頼も行ってみましょう。

  • Vol.26 産後パパ育休の創設について

    質問

    今年の4月と10月に育児休業の制度が変わって、男性も育児休業が取得しやすくなるって聞いたのですが、それはどんな制度ですか?また、その制度を利用して休んだ時には給付金とかもらえるのですか?

    ポイント

    1. 「産後パパ育休(出生時育休制度)」は、対象の期間は子の出生後8週間以内で4週間まで取得可能な制度です。しかも、1回だけでなく分割して2回の取得も可能で、労使協定を締結していれば休業中に就業する事も可能な便利な制度です。
    2. 産後パパ育休を取得した場合には、出生時育児休業給付金が受けられるので、無給の場合と違って仕事と育児の両立がしやすい制度となっております。
    3. 男性の育児休業取得率は少しずつ増えてきましたが、まだ13%代と女性の育児休業取得率に比べてとても低く、日本は遅れていると言われています。その改善のためにも育児・介護休業法改正の一環として、今年の10月に産後パパ育休制度が創設されて、男性も仕事と育児を両立できるようにした制度が創設されました。

    解説

    1. 産後パパ育休の「育児休業給付金」の支給要件としては、休業開始前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上(ない場合は就業時間数が80時間以上)ある月が12カ月以上あること。また、休業期間中の就業日数が、最大10日若しくは時間数が80時間以下であること。

    2. 労使協定を締結している場合に限りますが、休業中に勤務先の仕事ができます。ただし、就業可能時間や仕事内容は労働者が合意した内容に限り日数等は上限があります。

    3. 月の末日が育児休業期間中である場合若しくは同一月内で14日以上の育児休業を取得(開始・終了)した場合には月給にかかる厚生年金保険料と健康保険料が免除されます。

    ❀今回の改正を利用して男女で協力して育児に参加しましょう。

  • Vol.25 コロナ関連の休暇・休業について

    質問

    新型コロナについて、職場でも、コロナ感染した、家族に感染者が出た、濃厚接触者として疑いがある等で社員が休業することがあります。体調不良で休むことはしようがないと思いますが、休んだ場合の賃金はどうなるのでしょうか。法律で定めがあるのでしょうか。

    ポイント

    1. コロナ関連休業は一般的に、①業務に起因する場合は労災保険適用、②個人的な傷病の休業は健康保険適用、③自己都合で休む場合は、有給休暇または会社の規則に基づき病気休暇や休職制度を利用します。①②は法律の定めがあります。
    2. 今回のように新型コロナで休む場合は、各会社でルールを決めていることがありますので、下記の事例を参考に自社の規則などを確認してください。

    解説

    1. ワクチン接種の休暇
    ・ワクチン接種日1回目を特別有給休暇か自己休暇で取得させています。
    ・ワクチン接種2回目の接種後、副反応が出た場合は、〇日間を特別休暇とする。
    期間は政府が定める期間。
    注意点としてワクチン接種は強制したり、接種しない社員に対して差別的取り扱いは禁止されています。

    2. PCR検査について
    ・得意先訪問など、業務の必要性で会社が検査を命令した場合、費用は会社負担。
    ・本人希望の場合は、自己負担としています。

    3. 感染者、濃厚接触者について
    ・感染者が出た場合、拡大を防ぐため社内消毒や社員の健康状況確認を優先します。
    ・業務上で感染し休業した場合…労働災害保険を申請します。
    ・自己都合で感染し休業した場合…傷病手当や有給休暇を利用します。
    ・濃厚接触者で自宅待機の場合…会社命令の出勤停止は、休業手当支給または自己の休暇を利用します。

    その他、感染拡大防止のために、お客様対応のルール化、日々の社員の健康チェックの実施も大切です。また、業務に支障をきたさないように、在宅勤務や時差出勤、交代勤務等を実施しています。
    法令の定めはなくても、経営者も社員も協力してコロナ感染の拡大防止に取り組みましょう。
    ※新型コロナウイルス感染症に関する最新情報はご自身でもご確認ください。

  • Vol.24 介護休暇について

    質問

    最近職場で、介護休暇を利用したいと申し出た社員がいました。
    2021年1月から、介護休暇は時間単位でとれるということも耳にしましたので、介護休暇について教えて下さい。

    ポイント

    1. 介護休暇とは、家族が要介護状態であることが前提で有給休暇以外に取得できる休暇です。
    2. 介護休暇を利用できるのは、雇用期間が6か月以上の全ての従業員です。
    3. 介護休暇の日数は、対象家族が1名の場合は1年度につき5日、対象家族が2名以上の場合は10日までです。時間単位で取得することもできます。
    4. 介護休暇中の賃金の有給か無給かは、各社の規程で定めます。(法律の定めはありません)

    解説

    「介護休暇」とは、社員が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族の介護や世話をするための休暇で、93日の介護休業とは別の休暇です。
    介護休暇を利用できる社員の要件は、次の通りです。
    1. 家族が2週間以上の要介護状態にあること
    2. 対象家族は、父母、配偶者、子(含む養子)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。
    3. 雇用期間が6か月以上あること。パート、アルバイト社員でも利用できます。(日雇い労働者、労働時間が週2日以下は労使協定で取得できないこともあります。)
    4. 取得できる日数は、有給休暇以外に対象家族が1名の場合1年度で5日、2名以上は10日。時間単位で取ることも可能です。
    5. 賃金については、有給か無給かは会社の規程によりますので、就業規則で確認しましょう。介護休暇には、給付金はありません。

    介護休暇は、介護をしながら働き続けられるように制定された制度です。通院の付添いや介護サービスの手続きや打合せなど、介護で休暇が必要になった場合に利用できます。
    事業主は介護休暇の申し出を断ることはできませんので、自社の制度について事前に確認しておくことも必要です。

  • Vol.23 新型コロナに関する休業手当金について(令和3年9月版)

    質問

    令和2年3月頃から新型コロナウィルス感染症の影響で、勤務日数が減っています。
    給与は一部支払われていますが、上司は「給与全額ではないが、休業手当金として支払っている」とのことです。休業手当金というのは、支払い基準が法律で定められているのでしょうか。また、休業する日数に上限があるのでしょうか。
    マスコミ報道で、雇用調整助成金は会社が申請すれば会社に支給されると聞いています。直接、従業員に支払う助成金はないのでしょうか。

    ポイント

    1. 休業手当金は、使用者の責任による事由で休業させた場合、休業期間中の従業員に、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないものです。(労基法第26条)
    この際の休業とは、働く日(労働日)に「働く意思と能力があるが労働することができない状態」をいいます。本来の労働する必要のない休日や病休、自己都合で取得する有給休暇などは該当しません。
    2. 休業手当は、平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。100分の60以上であれば上限はありませんし、休業日数についても上限はありません。
    3. 雇用調整助成金は、従業員を休業させて、休業手当を支払った場合に事業主が申請するものです。また、休業した従業員に休業手当の支払いが困難な場合には、従業員が直接申請できる「休業支援金・給付金」があります。

    解説

    1. 今回の新型コロナ感染症の拡大感染防止のため、多くの企業で活動を制限し、従業員の出社日数や勤務時間数を減らしたり、在宅勤務などを実施しています。この休業が使用者責任なのか議論はありますが、国は従業員の雇用を維持する企業に雇用調整助成金で支援することにし、使用者都合として休業手当金を支払うことを求めています。仕事ができないための休業なので、テレワークや、病気休暇や自己都合で休む場合は対象とはなりません。
    2. 休業手当金は平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。(基本給ではありません)
    休業手当の支給割合は60%以上であれば使用者が決めることができます。
    3. 休業手当の計算は、1日当たりの平均賃金✕60%以上✕休業した日数で計算します。また、短時間等の時間休業であった場合は、時給✕60%以上✕休業した時間、を支給しなければいけません。

    今回の新型コロナ感染症による影響で、企業も従業員も働く環境が大きく変化しています。国も色々な支援策を設けています。支援策の申請には期限もありますので、相談センターや関係コールセンター等に確認して、早めの利用で厳しい環境を乗り越えましょう。

  • Vol.22 身元保証人について

    質問

    求職活動をしていて、正社員の内定通知を受け取りました。
    提出書類がいくつか書かれていますが、その中に「身元保証人を2人」必要と書いてあります。1人は親族で、もう1人は親族以外となっています。
    この「身元保証書」は必ず出さなければいけませんか。もし親族以外で探せない場合、採用されないのでしょうか。また、身元保証人はいつまでの保証になるのでしょうか。

    ポイント

    1. 身元保証書について労働基準法に規定はありません。提出を拒否することもできますが、身元保証書を提出しない場合、企業側も採用を拒否する可能性があります。
    2. 身元保証人の期間は、期間の定めがない場合は3年間、定めがあっても最長5年間とされています。会社によっては更新することもあります。
    3. 身元保証人が探せない場合は、会社に相談してみましょう。

    解説

    身元保証とは、①採用する社員がきちんと仕事に従事できる人という身元を証明する目的、②社員が企業に損害を与えた場合(例えば、会社のお金を無断で私的流用した、会社の顧客情報を流出させて会社に損害を与えた、行方不明になったなど)、本人に十分な賠償能力がない時、本人と保証人が連帯して賠償責任を約束するために必要とされています。
    このような事態が起きなければ、身元保証人に迷惑をかけることはありません。身元保証人を求めるかどうかはそれぞれの企業で任意に定めることになっています。

    身元保証人の期間は、期間の定めがない場合は3年、最長でも5年とされていますが、会社によっては更新してさらに5年延長することもあります。
    身元保証人にふさわしい人物の判断は、会社に一任されており、1人、2人などその条件についても企業ごとで異なっています。一般的には「安定した収入があること」が原則で、友人・知人でもよいのです。これまでは身元保証人の賠償額を決めずに身元保証契約ができましたが、2020年4月からは、賠償額の上限を決めなければいけません。(身元保証に関する法律)
    不幸にも損害賠償するような問題がおきても保証人が全ての責任を取る必要はなく、保証人側には契約解除といった自分を守る権利も残されているので、お願いするために覚えておくといいでしょう。

    身元保証人が探せない場合、企業に相談することをお勧めします。ぜひ採用したい人物であれば、よい助言がもらえるでしょう。

  • Vol.21 時間外勤務した場合の賃金について

    質問

    1日6時間の週5日の短時間勤務をしています。月に2~3回6時間を超えて働くことがありますが、それは残業として給与明細に記載されていないようです。
    先日、会社の総務担当に質問しましたが、総務担当者は、「基本給の中に残業代も含まれている」と説明がありました。よく理解できないので残業代についての計算方法について、教えていただけませんか。

    ポイント

    1. 所定の労働時間を超えて働いた場合、(相談者の場合は所定時間は6時間)その超えた時間について賃金を支払う必要があり、労働基準法第37条に定められています。
    2. 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合、その超えた時間については割増賃金を支払わなければいけません。①労働時間の延長(法定労働時間を超えた場合)は 2割5分以上 ②深夜 (22時~5時まで)労働の場合は2割5分以上 ③休日労働(法定休日)の場合は3割5分以上の割増賃金を支払わなければいけません
    3. 残業代が基本給に含まれている場合、残業時間と金額を明確にしなければいけない。

    解説

    賃金は、業務で働いた時間分を支払わなければいけません。
    所定時間を超えて働いた場合の計算については、法令で定めがありますので、会社任せにせずに働く者の基礎知識として理解しておきましょう。
    例えば6時間勤務の人が6時間を超えて働いた場合、時間外勤務手当は8時間 (法定労働時間といいます) までは所定の賃金で計算します。
    法定労働時間の8時間を超えた時間は2割5分以上の割増賃金で計算します。また午後10時から午前5時までを深夜労働として、さらに2割5分以上の割増で計算します。休日は法定休日(週1回)に勤務した場合3割5分以上の割増計算をしなければいけません。

    時間外勤務をする場合は、それが業務命令であれば問題はありませんが、自己都合で居残りした場合は時間外と認められないこともありますので、上司の指示であることの確認をしましょう。とくに時間外勤務は毎月の仕事によって変動することがありますので、自分の出勤簿やタイムカードで勤務した時間を確認するとよいでしょう。

    総務担当が「基本給に入っている」と説明していますが、時間外の賃金は何時間分で金額はいくらなのか確認する必要があります。

  • Vol.20 契約社員から正社員へ変更したときの有給休暇について

    質問

    これまで2年間、週3日フルタイムの契約社員で働いていました。有給休暇日数は年間6日でした。今回途中で正社員採用になりましたが、正社員になると有給休暇日数は増えるのでしょうか。入社日は4月1日です。またいつから変更になりますか。それと有給休暇日数は毎年増えていくのでしょうか。

    ポイント

    1. 正社員に登用されると、有給休暇日数は週の労働日数に応じて変更になります。
    2. 変更される時期は、正社員になった直後の基準日(一般的には入社日)からです。
    3. 有給休暇は勤続年数に応じて、毎年増えていきますが、上限は20日になります。

    解説

    労基法では、入社後6か月継続勤務し、労働すべき日の8割以上出勤していれば、勤務年数に応じた有給休暇が付与されます。
    具体的には、パート期間の5日の有給休暇は、正社員に採用された後も有効です。
    勤務時間が週30時間未満の場合、週の勤務日数に応じた有給休暇が付与されていました(比例付与といいます)。相談者の場合、週3日2年で、6日が付与されていました。

    1. 今回正社員に採用されたことで、下記の有給休暇が与えられます。
    ◆年次有給休暇日数(30時間以上、週5日勤務)

    勤続年数
    付与日数
    6ヶ月
    10日
    1年6ヶ月
    11日
    2年6ヶ月
    12日
    3年6ヶ月
    14日
    4年6ヶ月
    16日
    4年6ヶ月
    18日
    6年6ヶ月以上
    20日


    2. 正社員になってからの変更時期は、正社員になった直後の基準日(4月1日)からです。すぐに変更されるわけではありません。

    3. 算定期間中の出勤率が8割以上であれば、勤続年数に応じた日数が付与されます。
    出勤率が8割未満になると、翌年は有給休暇は付与されませんから、休むと欠勤になることがあります。
    しかし、その翌年8割以上出勤すると、その勤続年数に応じた有給休暇が与えられますが、上限は20日となっています。

  • Vol.19 就業規則は、だれがどのように作成するのですか

    質問

    職場で働く場合に、労働時間や休憩、時間外労働、休日などについて、上司に確認すると上司から「就業規則で確認して」と言われました。また、同僚が休職したいと申し出たときに「わが社は、就業規則に休職制度はないので、役員と相談して」と言われました。
    そもそも就業規則は誰が作成するのですか、また就業規則に書いてなければ、何もできないのですか。教えて下さい。

    ポイント

    1. 労働者が安心して働ける明るい職場つくりのために労働時間や賃金、人事・服務規律などを定めます。10人以上の労働者の労働条件や待遇の基準をはっきりと定め、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、これを作成しまたは変更する場合に、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。(労基法第89条)
    2. 就業規則を作成する際には、絶対的記載事項(法で定めた必ず記載すべき事項)と相対的記載事項(会社で任意に定めた事項)があります。(労基法第89条)
    3. 就業規則を作成したら、労働者全員に周知(知らせる)しなければいけません。

    解説

    1. 労働時間や休日、賃金、退職に関することなどは、絶対的記載事項ですので、就業規則を確認することが大切です。
    2. 休職に関することや退職金、懲戒に関することなどは、相対的記載事項ですので、それぞれの会社で定めることができます。自社の就業規則で休職の項目があるか確認して下さい。
    3. 常時10人以上の労働者が働いている場合は、就業規則を作成して、労働者全員に周知しなければいけませんが、周知の方法は色々あります。会社側から説明会を行う、労働者がいつでも見える場所に置いておく、電子媒体等で周知するなどです。

    就業規則に記載がなければ、会社の制度が利用できないというものでもありません。例えば、休職の定めがなくても会社の承認により、一定期間の休職を認めることもできます。就業規則は、会社の働き方の原則ですが、その運用はある程度柔軟に行われています。
    就業規則を作成し、又は変更する場合の所轄労働基準監督署長への届出については、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を提出します。

    社内で就業規則の学習会を行って会社の服務規律を理解するのも良い機会です。

  • Vol.18 新型コロナに関する休業手当金について(令和2年9月版)

    質問

    令和2年3月頃から新型コロナウィルス感染症の影響で、勤務日数が減っています。
    給与は一部支払われていますが、上司は「給与全額ではないが、休業手当金として支払っている」とのことです。休業手当金というのは、支払い基準が法律で定められているのでしょうか。また、休業する日数に上限があるのでしょうか。
    マスコミ報道で、雇用調整助成金は会社が申請すれば会社に支給されると聞いています。
    直接、従業員に支払う助成金はないのでしょうか。

    ポイント

    1. 休業手当金は、使用者の責任による事由で休業させた場合、休業期間中の従業員に、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないものです。(労基法第26条)
    この際の休業とは、働く日(労働日)に「働く意思と能力があるが労働することができない状態」をいいます。本来の労働する必要のない休日や病休、自己都合で取得する有給休暇などは該当しません。
    2. 休業手当は、平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。100分の60以上であれば上限はありませんし、休業日数についても上限はありません。
    3. 雇用調整助成金は使用者が申請し、休業手当を支払った使用者に支給される助成金です。現在、休業した従業員に支払う支援制度はありませんが、現在国会でも直接従業員に支払う支援策も検討されているようです。今後に期待したいです。

    解説

    1. 今回の新型コロナ感染症の拡大感染防止のため、多くの企業で活動を制限し、従業員の出社日数や勤務時間数を減らしたり、在宅勤務などの導入を実施しています。この休業が使用者責任なのか議論はありますが、国は従業員の雇用を維持する企業に雇用調整助成金で支援することにし、使用者都合として休業手当金を支払うことを求めています。仕事ができないための休業なので、テレワークや、病気休暇や自己都合で休む場合は対象とはなりません。
    2. 休業手当金は平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。(基本給ではありません)休業手当の支給割合は60%以上であれば使用者が決めることができます。
    3. 休業手当の計算は、1日当たりの平均賃金✕60%以上✕休業した日数で計算します。また、短時間等の時間休業であった場合は、時給✕60%以上✕休業した時間、を支給しなければいけません。
    今回の新型コロナ感染症による影響で、企業も従業員も働く環境が大きく変化しています。政府の支援策を利用して厳しい環境を乗り越えましょう。

  • Vol.17 始業前、業務終了後の清掃時間は労働時間ですか

    質問

    私の職場では、始業前に早めに出勤し、全員が事務所の内外を清掃しています。また、業務終了後に10~15分の清掃時間があり、業務が忙しいときは終業時間をオーバーすることがあります。
    この時間については、暗黙の了解事項となっているようで、賃金の支払もありません。これは労働時間にならないのでしょうか。

    ポイント

    1. 清掃時間が会社から義務化されていて、強制されていれば、労働時間になります。
    2. 会社からの強制はなく、自主的に行っていれば労働時間にならないこともありますが、清掃している社員と清掃しない社員に何らかの格差(例えば評価に差があるなど)があれば、労働時間と判断されます。
    3. 労働時間と判断されると、所定労働時間外であればその時間の賃金の支払が必要となります。

    解説

    労基法上の労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」を指します。
    始業から終業までの時間から休憩時間を除いた所定労働時間は、特別な事情のない限り労働時間となります。ですから始業前の清掃、仕事の準備時間、朝礼などは、客観的な事実を踏まえて労働時間かどうかを判断します。
    これまでの最高裁の判断基準では、仕事の準備を使用者から義務付けられていれば「使用者の指揮命令下に置かれたもの」として労働時間になるものと判断されることが多いです。

    ただ、職場を清潔にしたい、快適な職場づくりのために、社員が自主的に行っている、参加できない社員に対して、特段不利益を講じない、ということであれば、労働時間と判断されないこともあります。
    「職場環境を清潔に保つこと」は、事業主にも働く人にも義務となっています。(労働安全衛生法規則第619条、620条)その理由として、作業場を清潔に保つことで、事故防止、疾病予防等のねらいがあります。
    清掃を、どの時間でどの程度行うかは、職場全体で話し合い、ルールを決めるなどの工夫が必要でしょう。各職場に合った方法を検討するのがよいと思います。

    就業時間内に行うようにして、年に1回、2回の大掃除などは時間外になるのであれば、計画して時間外手当を支払う必要があるでしょう。

  • Vol.16 損害賠償を請求されたら 払わなければいけませんか

    質問

    先日、雨の日に会社の車を運転中にスリップして破損してしまいました。事業主から、修理費の全額を賠償するように言われました。
    全額、自己負担で損害賠償しなければいけませんか。また毎月の給料から差し引くと言われたのですが。

    ポイント

    1. 会社に与えた損害が従業員の「故意」でない限りは、全額を請求することはできません。
    2. 従業員の責任が重大である場合は、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当な限度の範囲」でいくらか賠償することもあります。
    3. 事業主が、一方的に給料から損害賠償額を天引きすることはできません。
    4. 会社が従業員に対して損害賠償請求をすることについては、法律上の妨げはありませんが、必ずしも従業員が支払わないといけないわけではありません。

    解説

    業務中の会社の車の事故は、会社は車両保険の加入で損害を抑える方法をとっています。 従業員が、故意に事故を起こしたということでなければ、従業員に重大な過失があったとはいえないことがあります。会社に与えた損害の状況は次の項目を判断根拠とします
    ① 会社は、車両保険等に加入することにより車両損害を分散させる手だてをとっていなかった場合、会社側責任が問われます。
    ② 当該従業員が交通事故を起こすことが日常茶飯事であったということは、会社が従業員に対する安全指導、車両整備等にも原因があったものと推認されることで、会社側と従業員の責任を「公平な範囲」で判断します。
    ③ 今回の事故の発生について、従業員に重大な過失があったのかということ。
    ④ たとえ会社から従業員に対する損害賠償が許される場合でも、毎月の給料から天引きすることも事業主だけの判断ではできません。給料は全額支払わなければならないという「全額払いの原則」が法律上定められています。(労働基準法24条、17条)

    以上のことから、多額の損害賠償を支払う可能性は低いと思われます。「故意」でないことを丁寧に説明する必要があります。

  • Vol.15 働くときのルールはどのようになっているのでしょうか

    質問

    職場の問題や働き方で困って労働相談コーナーに電話しました。
    相談員の方から「働くときのルール」を教えていただきましたが、法律で決まったルールがあるのでしょうか。また、働く際に、どんなことに気をつければよいでしょうか。

    ポイント

    1. 働くときは、雇用する人と雇用される人(労働者)の間で、契約を結ぶことが労働基準法で定められています。
    2. 働くときの契約は、雇用契約書や労働条件通知書の発行が必要です。
    3. 働く時の契約は「雇用契約書」「労働条件通知書」で行われますが、その内容は法律に違反してはいけません。その契約内容を「働く時のルール」といっています。

    解説

    ① 就職する際は、契約の内容をお互いに確認しましょう。
    「雇用契約」の内容について不明確な点やわかりづらい点は、説明を受けて納得しましょう。
    ② 契約は、口頭でも成立しますが、お互いが合意した証明としてできるだけ文書で作成するのがよいのです。特に事業主が発行する「労働条件通知書」は文書で明示することが定められています。ただし、2019年4月からは「ファクシミリを利用する送信の方法」と「電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法」でもよいことになりました。
    メールの通知は、労働者が希望していなければ、文書で交付しなければいけません。
    ③ 雇用契約の内容は、法律で定められ、「働く時のルール」と呼ばれます。
    ㋐契約期間 ㋑就業の場所 ㋒従事する仕事の内容 ㋓始業・終業・労働時間・休憩時間・所定外労働時間の有無など ㋔休日 ㋕休暇(年次有給休暇など) ㋖賃金(基本給、手当、賞与、退職金など) ㋗退職に関する事項(定年、退職の手続き) ㋘その他(社会保険の加入状況など)

    働く際には、労働基準法をはじめ労働安全衛生法、育児・介護休業法など、多くの法律があり、その対象になったときに法律に基づいて適用しなければいけません。
    働く側として、雇用契約や労働条件の内容を確かめて、安心して働き続けましょう。

  • Vol.14 遅刻の際の賃金カットについて

    質問

    会社の規程で、「遅刻した場合は5,000円の賃金カットをする」という項目があります。社員の中でも、「これは厳しいのではないか」「そもそもこのやり方は正しいのか」という意見も出ています。遅刻するのは良くないことですが、その処分の方法はどのように考えたらよいのか、ご指導ください。

    ポイント

    1. 遅刻した時間の賃金をカットする
    2. 遅刻は服務規律違反であり、懲戒として処分する

    原則として、賃金は労務提供に対して支払われなければいけません。その原則からすると、遅刻した時間は、労務提供がなかったことになりますので、遅刻した時間に賃金を払わなくてもよいことになります。つまり「ノーワーク・ノーペイの原則」です。
    ただ、遅刻した時間が何時間にあたるのかについて、注意する必要があります。「ノーワーク・ノーペイの原則」は、働かなかった時間については賃金を支払わないので、遅刻した時間以上の分まで、賃金をカットすることはできません。
    もう一つは、遅刻を服務規律違反として懲戒処分とすることになっていれば、賃金を減額することができます。

    解説

    ①の場合、遅刻した時間以上に賃金をカットすることはできません。ですから1ケ月の遅刻が、合計で何時間になるのかを確認する必要があります。遅刻合計時間の賃金を支払わないことになります。
    ②の場合であれば、遅刻の時間に関係なく賃金をカットすることができますが、その合も労基法(労働基準法第91条)で、「1回の額が平均賃金の半額を超え、総額が1賃金支払い期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされています。

    以上のことから、1回の遅刻で5,000円の額が1日の半額を超えていないか、また月に数回の遅刻の場合は、1賃金支払い期間で賃金総額の10分の1を超えていないかを、確認する必要があります。
    この機会に、みんなで遅刻の対応について話し合い、お互いに理解することも必要です。

  • Vol.13 ダブルワークの雇用保険加入について

    質問

    現在、2か所でパートとして働いています。雇用保険に加入するには、どのような働き方が良いのか教えて下さい。

    ポイント

    雇用保険は、2か所以上で働いていても、一つの雇用関係(生計を維持するに必要な賃金を受ける事業所)でのみ加入します。つまり2か所で雇用保険加入はできません。

    雇用保険の加入要件は次のとおりです。
    1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
    2. 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。

    解説

    労働者を1人でも雇用する事業主は、雇用保険に加入が義務付けられていますが、上記①②の要件が必要です。
    現在2か所でパートとして働いているということですが、どちらかの働き方が週20時間以上になっているのか、確認しましょう。
    2か所以上の事業所で働いていても、雇用保険は、一つの雇用関係のみの加入となります。その場合、原則として相談者が生計を維持するために必要な賃金を受ける事業所で雇用保険の加入手続きを行います。

    1か所の事業所が週20時間以上で、もう1か所が週20時間未満の勤務の場合
    この場合は、週20時間以上勤務している事業所だけで雇用保険に加入します。雇用保険料は、その事業所で支払われる給与で計算されますので、もう一方の事業所の給与は計算されません。

    2か所の事業所が20時間未満の場合
    この場合は、どちらでも雇用保険の加入はできません。
    雇用保険の加入がなければ、離職した際に失業給付等を受けることができませんので、できるだけ雇用保険に加入できる働き方をお勧めします。

    最近は、柔軟な働き方ということで、副業や兼業を認める会社も増えてますし、厚生労働省でも「兼業・副業の促進に関するガイドライン」を発表しています。できれば、雇用保険加入事業所に勤務しながら、副業や兼業も検討するとよいと思います。

  • Vol.12 病気やケガで休業したときの傷病手当金について教えて下さい

    質問

    病気やケガで仕事を休むと傷病手当金が支給されると聞きました。傷病手当金の制度について教えて下さい。

    ポイント

    1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業で仕事に就くことができないこと
    2. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
    3. 休業した期間について給与の支払いがないこと

    解説

    傷病手当金は、社会保険に加入している事業所に雇用されている従業員(被保険者)が業務外の病気やケガで休業したときに、生活を保障するために設けられた制度です。被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。支給される条件は、次のとおりです。

    (1)連続3日間の待機期間が必要です
    業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。

    (2)給与の支払いがないこと、支給期間は1年6か月
    休業期間について、給与の支払いがあれば、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いが傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。
    支給期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6ヵ月に算入されます。
    任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。
    傷病手当金の支給要件に該当すれば、安心して療養することができます。

  • Vol.11 有給休暇を時間単位で取得するときのポイントは

    質問

    最近、社員から「有給休暇を時間単位で取りたい」との申し出があります。 理由は、「私的な用があっても1日は必要ないし、業務の責任から1日休むのは気が引ける」というものです。会社としても、短時間社員やフルタイム社員もおりますので、1日休暇を取るより、短時間で取得してほしいこともあります。
    これまで、半日単位での取得は認めていましたが、時間単位での有給休暇取得の制度を導入する場合、どのような手続きが必要なのか、教えていただきたい。

    ポイント

    年次有給休暇の時間単位付与については、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(当該労働組合が無い場合には労働者の過半数代表)が書面による協定を締結することにより、時間単位での年次有給休暇を付与することができます。
    1. 時間単位年休の対象労働者の範囲
    2. 時間単位年休の日数(5日以内の範囲)
    3. 時間単位年休1日の時間数
    4. 1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数です。ただし、分単位など時間未満の単位は認められません。

    解説

    最近、多様な働き方が増えているため、有給休暇についても1日単位だけでなく、半日単位、時間単位の取得希望があります。労基法では毎年一定の休暇を与えることで、働く人の心身を回復して、ゆとりある生活を送ることを目指しています。ところが、有給休暇の平均取得率は5割を下回っているため、政府では2020年度までに7割取得を目標としています。そのため、まとまった日数を取得するということを踏まえつつ、年次有給休暇の有効活用を目的として、労使協定を締結することで、時間単位休暇の取得を認めることにしました。

    有給休暇の時間単位付与については、労働者代表との労使協定が必要です。協定の内容は、(1)労働者の範囲の定め、また全ての有給休暇を時間単位で与えるのではなく、(2) 5日の範囲内としています。1日の時間数は、(3)1日の所定労働時間数としますが、7.5時間の場合は、切り上げて8時間として計算します。注意事項としては、分単位取得はみとめられません。
    時間単位有給の導入も働き方改革の一歩になるかもしれません。検討してください。

  • Vol.10 入社前研修に参加したときに賃金の支払いはありますか

    質問

    今年度の新卒採用で、4月1日入社の内定が決まりました。
    内定した会社から入社前の3月20日から内定者研修が始まるので、参加するようにとの通知がありました。
    交通費は出ますが、賃金については「会社の基準で支払う」となっていますので、いくらになるかはわかりません。研修中でも初任給と同じ賃金が支払われるのでしょうか。
    内定ということで、正式な雇用契約書は交わしていません。

    ポイント

    賃金は、原則「労働した時間に支払われる」ものです。
    入社前研修は、労働契約が締結されてはいませんので、「労働」と認められなければ賃金としての支払い義務はありません。ただし、研修が「労働した」と認められれば、賃金額を支払わなければいけません。研修が「労働」と認められるかどうかがポイントです。
    入社前研修は、参加が義務づけられている場合は、賃金として支払われなければなりません。

    解説

    賃金は「労働した場合」に支払われなければいけません。
    入社前研修については、参加が義務づけられている、強制参加である場合は、賃金を支払う必要が出てきます。
    その場合の賃金額はいくらかということですが、内定者は、正式な雇用契約が締結されていないので初任給が決定していません。初任給の額は、入社した労働者に支払うことを契約上で約束した金額ですので、入社予定者に支払う場合の基準にはなりません。
    入社前の研修の場合は、最低賃金の額以上を支払えば特に法令違反にはなりません。
    一般的には、参加した時間分の賃金を支払うことが多いです。また、会社によっては、賃金という名目ではなく、「研修手当」「日当」等として支払われることもあります。
    入社前研修に支払われる日当や賃金、食事費の負担などについても研修を受ける前に、確認しておくのがよいでしょう。また、いつ支払われるのか、現金支給か口座振り込みなのかということなど、事前に会社側に確認をしましょう。

  • Vol.09 無期転換ルールとは

    質問

    最近、無期転換という言葉をよく耳にします。同じ事業所で5年以上契約社員で勤務した場合、希望すれば無期雇用になれると聞いています。
    5年以上であれば、誰でも無期雇用になれるのでしょうか。その場合、正規社員になれるということでしょうか。給与等はどうなるのか教えて下さい。

    ポイント

    無期雇用転換の条件は次のとおりです。
    1. 通算契約期間は、平成25(2013)年4月1日以降の有期労働契約から算定します。(それ以前の期間は算定しません)
    2. 契約期間が通算5年を超えた労働者が「申込み」をした場合に、無期労働契約が成立しますから、平成30年4月1日から対象者が出ます
    3. 無期転換後の労働条件については、一般的に直前の有期労働契約と同一の労働条件となりますが、各社で規則等を定めています。

    解説

    「無期転換ルール」とは、労働契約法の改正により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルールのことです。
    平成25年4月1日以降の契約から5年の期間が通算されますので5年の継続勤務(6ヶ月未満の空白期間は継続勤務とみなす)があれば、(労働契約法第18条で適用除外されている船員を除く全ての労働者に)、無期転換ルールは適用されます。
    平成30年4月1日以降に無期転換の申込権が発生します(ただし、5年の間に6か月以上の空白期間がある場合、通算5年に不足がでることもあります)が、自動的に転換するわけではありません。
    無期転換を希望する労働者は、無期転換の意思を会社に伝える必要があります。

    また「無期転換ルール」は、これまでの期間の定めのある契約が、期間の定めのない契約に転換するもので、正社員になるということではありません。給与や待遇等の労働条件については、各社で定めていますが、一般的に直前の労働条件と同じ、または下回らないことになっています。

  • Vol.08 定年後の再雇用について

    質問

    わが社の定年は60歳と定められています。私も今年で60歳を迎えます。
    これまでわが社では定年後も働く人は出ていませんが、周囲の会社は、65歳まで雇用することになっているようです。私も65歳までは働きたいと思っていますが、可能でしょうか。その際の賃金や社会保険等は、どのようになっているのでしょうか。

    ポイント

    1. 「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)により、定年後の継続雇用を希望する場合は、65歳まで雇用することが義務付けられています。
    2. 労働時間が週30時間以上であれば社会保険の加入が義務づけられています。
    3. 労働時間が週20時間以上であれば雇用保険の加入が義務づけられています。
    4. 定年後の労働条件については、法的な規制はありませんので、経営者と働く人の双方での合意が必要です。

    解説

    最近は平均寿命も伸びていること、みなさん健康なので60歳以降も働く人がほとんどです。また社会全体でも、働き手が必要ですので、会社も高年齢者に働いてもらいたいと考えています。労働条件については、各企業で異なりますので、会社の方針を確認することが大切です。

    多くの企業では、次のような対応していますので、参考にして下さい。
    ・身分について
    定年前と同じ正社員の場合もありますが、契約社員、再雇用社員、嘱託社員等の呼称の変更もあります。
    ・業務内容
    定年前と同じ業務ですが、変更することもあります。
    ・肩書き
    業務や会社の体制によって「継続する、継続しない」を定めています。
    ・労働時間
    フルタイム、短時間、短日勤務等、業務や本人希望で選択も可能。
    ・給 与
    業務責任により定年前より減額することもあります。月給制、時給制など。在職老齢年金(働きながら受給できる年金、生年月日によって支給開始年齢の定めがある)をもらうことも可能です。
    ・手当・賞与
    会社によって違いがあります。

    初めての継続雇用の方は、後に続く後輩のモデルになりますので、よく検討することが大切です。労働条件については、早目に確認して、これからの働き方の計画を立てることをおすすめします。

  • Vol.07 正社員転換時の年次有給休暇について

    質問

    週3日、7時間勤務のパートタイムとして3年間勤務しました。今年の7月から正社員に登用されました。パート社員期間の有給休暇が5日残っています。
    会社から以前の有給休暇は消滅するので、正社員になって6か月経過後、8割勤務の場合10日の有給休暇が新たに発生すると説明を受けました。
    そうすると正社員になって6か月間は、休暇がとれなくなりますので、休んだ場合欠勤として賃金カットになるようです。会社の説明は正しいのでしょうか。

    ポイント

    継続勤務の実態があれば、契約社員の期間から正社員転換は継続勤務とみなされ、有給休暇は通算されます。

    解説

    パート社員として勤務した後、雇用契約期間が中断されずに正社員として採用された場合、有給休暇日数は、パート期間から継続勤務したものとして、有給休暇は通算されます。
    具体的には、パート期間の5日の有給休暇は、正社員に採用された後も有効です。会社の説明のように、パート期間の有給休暇が消滅するわけではありません。次の有給休暇の付与日まで、休暇を消化することができますので、有給を取得したからといって、賃金がカットされることはありません。ただし、正社員に転換した時点で有給休暇日数も変更になるわけではありません。

    厚労省通達(昭和63.3.14基発150号)では、「年度の途中で所定労働日数が増加しても、年次有給休暇は基準日に予定されている所定労働日数に応じた日数を付与すれば足り、変更後の所定労働日数に応じて有給休暇の付与日数を増やす必要はない」とされています。正社員に転換されても、次の有給休暇の基準日までは、現在の日数になります。
    たとえば、パート期間は、週3日勤務でしたので、これまでの有給休暇は比例付与として6か月…5日、1年6か月…6日、2年6か月…6日、が付与されていました。
    正社員になると3年目(2年6か月を超えているとして)で12日が付与されますので、会社の方に、有給休暇日数を確認して下さい。

  • Vol.06 有給休暇の通勤手当支払いについて

    質問

    正規社員として勤務して3年になりますが、退職願いを出して、有給休暇を消化するために1か月休み、先月退職しました。
    退職日の翌日に賃金が振込されていたのですが、通勤手当が計算に入っていませんでした。
    通勤手当は毎月定額で支給されていました。
    これまで有給休暇で休んでも、通勤手当が減額されることはなかったのですが、このような場合通勤手当も請求できるのでしょうか。

    ポイント

    通勤手当は会社によって定め方が違いますので、規程内容を確認しましょう。
    ・年次有給休暇の賃金について、各社の就業規則では一般的に、次の3つの方法で定められています。
    有給休暇の賃金については、
    ①平均賃金で支払う
    ②健康保険法の標準報酬日額で支払う
    ③所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金で支払う
    就業規則の規程が①と②で定められている場合は、月の賃金の中に「通勤手当」が含まれていますので、通勤手当を支払う必要はありません。ただし③の、通常賃金で支払う場合の通勤手当の支払いについては、社内の規定の定めによります。

    解説

    通勤手当は、法律上の定めではありませんので、必ずしも年次有給休暇を取得した日について通勤手当を支払わなければならないということではありません。本来、通勤手当には、実費弁償的な性格があるからです。ですから、年次有給休暇を取得した日について、通勤手当が支払われなかったとしても、年次有給休暇を取得したために通勤費用がかかっていないことになりますので、支払われなくても違法とはいえません。

    就業規則等で、「通勤手当は、実際に出勤した日についてのみ支給する」「○日以上出勤しない場合は通勤手当を減額または支払わない」と定めていれば、通勤手当が支払われないこともあります。また、就業規則に定めがない場合は、通常賃金(通勤手当も含めた額)を支払うことになります。

    休暇の際の通勤手当については、どのような条件で決められているのかを確認してください。

  • Vol.05 育児休業給付金について

    質問

    1月に入社し、2月から正社員になりました。翌年の2月に出産予定です。
    出産後、育児休業をとる予定ですが、育児休業給付金はもらえますか。また、いつまで、いくらもらえますか。教えて下さい。

    ポイント

    育児休業給付金の支給には、次の要件があります。
    1. 雇用保険に加入していること、育児休業前の2年間のうち、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
    2. 育児休業中に、勤務先から1ヵ月に月給8割以上を貰っていないこと
    3. 休業日数が対象期間中に毎月20日以上あること
    4. 育児休業後に働く意思があること
    産前産後休業中は健康保険から出産手当金が、育児休業中は雇用保険から育児休業給付金が支給されます。育児休業給付金は、育児による離職を防いで仕事を続けることを支援する制度ですので、育児休業後は、職場復帰することを期待しています。

    解説

    育児休業給付金の支給期間
    給付金は、産後休業が終了した日の翌日(出産日から58日目)から、子が1歳の誕生日の前日までの休業した期間に給付されます。ただし、保育所に入所を希望して申し込み中で入所できない場合などの特別な理由がある場合は、1歳6か月まで延長が可能です。
    育児休業給付金の金額
    ①育児休暇開始から180日目:月給の67%
    ②育児休業開始から181日目以降:月給の50%
    書類の提出から2~5ヶ月後に、最初の給付金が振り込まれ、その後、2ヵ月ごとに給付金が振り込まれますが、2ヵ月ごとに追加申請が必要となり、申請を忘れると、その後の給付金がもらえなくなる可能性もあります。
    産前産後、育児休業期間中は、社会保険料が免除になります。


    ママの代わりにパパが育児休業を取得する場合も給付金を貰う事ができます。2人ともに育児休業を取得する場合「パパ・ママ育休プラス」といって、赤ちゃんが1歳2ヶ月になるまで、2人それぞれ1年間まで育児休業を取得できます。ママの場合は、産休期間(基本8週間)後から、育児休業が開始となりますが、パパの場合は、出生日または出産予定日から取得可能です。

  • Vol.04 人と雇うときのポイント

    質問

    これまで1人で会社を経営してきました。業務が忙しくなったので、2人雇う予定です。
    1人はフルタイムで、1人はパートで契約したいと思います。初めて採用するので、雇用管理の注意点について教えてください。

    ポイント

    1. 雇用契約の期間(無ければ「期間の定めなし」と記載する)
    2. 働く場所、仕事の内容
    3. 始業及び就業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換(交代勤務の場合の交替日、交替順序等)に関する事項
    4. 賃金の決定、計算及び支払いの方法、締切り日、支払い日
    5. 退職に関する事項(解雇の事由、定年年齢)

    解説

    雇用契約書(労働条件通知書)は、必ず発行しましょう。
    労働相談に寄せられる内容は、ほとんどが事業主と労働者の説明不足が原因と思われます。雇用に関して、事業主が守るべきことの最重要ポイントは、雇用契約書・労働条件通知書を労働者に発行することです。「契約」ですから双方の合意が必要です。
    契約はもちろん口頭でも成立しますが、労働の契約は、「使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と記しています。つまり文書で交付しなければいけません。
    事業主が提示した雇用契約書の内容を確認して、合意すればそれぞれが署名して契約が成立します。
    これは正社員だけでなく、パートやアルバイトの短期間雇用の場合も同じです。雇用契約書はお互いの信頼を確認するものです。

    労働相談には、「雇用契約書がない、見てない、説明がなかった」。また、労働者も「請求しなかった、雇用契約書は我が社は作成してない」等が多く双方の理解が十分でないケースが見られます。採用した社員に能力を発揮してもらうためには、雇用関係が安定していること、事業主に対する信頼を築くことが基本です。

    後々のトラブルを防ぐためにも、採用時には必ず雇用契約書を作成・配布して、お互いに確認し合うことで、安心・信頼して働ける社会にしましょう。

  • Vol.03 退職届の承認について

    質問

    正規社員として勤務して5年になります。会社の就業規則では1か月前に退職願を提出することが定められています。この度、一身上の都合で退職を申し出ました。もちろん退職予定日の1か月前に上司に退職の意思を告げ、翌日に退職届を提出しました。
    ところが上司から「次の社員を採用するまで、待ってほしい」と言われ、1か月経過しても退職願いが受理されていません。今後の再就職の準備もしたいのですが、退職願いは会社が承認しないと、退職できないのでしょうか。

    ポイント

    1. 退職は労働者の意思により、効力が発生するため、会社の承認を必要としません。
    2. 期間の定めのない雇用契約については、解約の申し入れ後、2週間(但し、月給制の場合は、当該賃金計算期間の前半に申し入れて下さい。)で終了することとなっており、会社の同意がなければ退職できないというものではありません。(民法第627条)

    解説

    正規社員の場合、期間の定めのない雇用契約になるので、労働者の申し出により2週間を経過すれば退職することができます。
    但し、会社の業務の運営上、就業規則に「退職は1か月前に申し出なければならない」と定められていることがありますが、会社の任意の定めです。今回、「次の労働者を採用するまで、待ってほしい。」と言われ、退職願いが保留になっているようですが、法的には強制する根拠はありません。また会社の承認がなければ退職できないものでもありませんので、2週間以上も経過しているのであれば退職は可能です。

    しかし、いつまでも保留になるようでは、お互いに今後の予定に支障をきたしますので、上司と相談して退職の予定期限を決めることも必要です。予定期限内で、引き継ぎ文書を上司に提出して、次の人の業務がスムーズにいくように準備できたら出社しなくてもよいということになります。契約期間の定めがある雇用契約の場合は、原則として、使用者は契約期間の満了前には労働者を辞めさせることができない反面、労働者も契約期間中は会社を辞めることができません。ただし、やむを得ない事由がある場合は、各当事者は直ちに契約を解除することができることとされています。

    5年間務めた会社ですので、退職もお互い気持ちよく行うよう双方で努力してみて下さい。

  • Vol.02 懲罰のルールについて

    質問

    入社して10年になる正規社員です。今回、うっかりミスをして会社に迷惑をかけてしまいました。上司から「お客様の信頼を失くした重大なミスだから、処分を検討している。減給になるかもしれない」と言われました。とても反省していますが、減給となると、どのくらい、いつまでになるのでしょうか。

    ポイント

    1. 減給は労基法で限度が定められています。
    2. 懲戒処分は就業規則上の根拠が必要です。

    解説

    長年仕事をしていてもミスを犯すことがあります。会社には業務を正しく進めたり、職場運営をスムーズにするために、従業員が守るべきルールや服務規律があります。この規律を守らずに業務に支障をきたしたり、職場環境を悪化させるなどの行為があった場合に、制裁罰として懲戒処分を行うことがあります。懲戒処分は、従業員に与える影響が大きいこともあり、特に慎重に行う必要があります。

    制裁を行うための要件は、①就業規則に定めがあること、②懲戒事由と罰則の程度が適正な範囲であること、③懲戒の手続きが妥当であること、です。会社の就業規則を確認してみましょう。
    制裁する場合は、問題となる行為の程度によって処分に違いがあります。懲戒の種類には、一般的に①戒告、②けん責、③減給、④出勤停止、⑤降職・降格、⑥諭旨解雇、⑦懲戒解雇があり、①から順に重い処分となり、会社によってその内容にも違いがあります。減給については、「1回の額は平均賃金の半額まで、複数回も制裁する際は一賃金支払い期間の賃金総額の1割までが限度」(労基法第91条)と定められています。そのため1つの事案に対して、何か月にもわたって減額することはありません。

    仕事上のミスが発生した場合、ミスや処分だけにこだわらず、今後の再発防止についても具体的な対策を検討しましょう。

  • Vol.01 上司のパワーハラスメント

    質問

    私の上司は、帰り間際に突然仕事を言いつけたり、仕事でミスをすると1時間くらい私を立たせたまま説教したりします。子供の保育園への迎えもあり、とても困っています。このようなことはパワーハラスメントだと思いますが、直接反論したりするとさらに大声を出したりしますので、どうしたらよいかわかりません。

    ポイント

    1. パワハラの正しい知識をもつ
    2. パワハラの解決の進め方について、職場の相談体制を確認
    3. 周囲への協力依頼、外部の支援制度の活用

    パワハラとは
    パワーハラスメント(パワハラ)は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。」です(厚生労働省)
    上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間等、さまざまな優位性を背景に行われるものも含まれます。
    パワハラは6つの類型に分類されていますが、現実はその他の事例もあります。
    1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
    2. 精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
    3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
    5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
    現実には、上司から指導・教育であると言われることが多く、指導とパワハラの判断が難しい面もあります。判断基準は「業務の適正な範囲か」「職場環境を悪化させる行為か」です。

    解説

    ご相談の場合、「帰宅間際に仕事を与えられる」「何時間も説教される」ことは業務の適正な範囲と言えるでしょうか。
    パワハラの解決策として、次の職場の体制を確認しましょう。

    ① 職場ではハラスメントの相談員が任命され、みんなに知らされていますか。
    相談員が任命されているか会社に確認しましょう。任命されていなくても総務や人事が担当していることもあります。
    ② 自分が受けている行為がパワハラかどうか確認してください。
    業務の適正な範囲でも、相手への言い方、表現方法も誤解を招くことがあります。乱暴に大声を出すなどは、職場環境を悪化させることになります。パワハラは身近な上司や先輩・同僚からの行為のため、直接「パワハラやめて下さい」と言いづらい面があります。一人で対処するより、職場の先輩や同僚に相談することや周囲の協力を得ることも必要です。
    上司のパワハラ防止とともに、―歩先行く職業人として、上司に「今日の業務予定を教えて下さい。今日中に行う業務がありますか」など先手を打って予防策を講じることもできます。また長時間の説教に対しては上司に影響力のある管理者に相談してもよいでしょう。
    パワハラは、管理者自身がパワハラの認識がないことも要因となりますので、会社にパワハラ研修を行うよう働きかけて下さい。研修を実施する事は、パワハラ予防策で最も効果的であるという結果が出ています。さらに問題が深刻な場合は、労働局雇用環境・均等室に相談することもできます。