労働相談Q&A

社会保険労務士が働く人と雇用する側の労働関係の法令について分かりやすく解説します。

  • Vol.32 職場でハラスメントの相談窓口を利用するときの準備について

    質問

    参加したセミナーで、すべての会社にハラスメント(職場のいじめ、いやがらせ)相談窓口の設置が法律で義務づけられていることを知りました。早速確認したところ社内の相談窓口は総務が担当しているとのことです。これまで上司からの嫌がらせを受けたことがありましたので、パワハラではないかと思い、相談窓口を利用しようと思いますが、相談するとき、どのような準備をすればよいでしょうか。
    また、社外にも相談することができるでしょうか。

    ポイント

    社内の「ハラスメント相談窓口」の相談員は、社員が担当することもありますが、外部へ相談依頼している会社もあります。相談窓口を利用するときは、窓口の相談日時、相談方法(面談、電話、Faxなど)などを確認した上で、相談の予約を取り、相談をスムーズに行うために次のような準備をして臨むことをお勧めします。

    解説

    2022年4月からパワハラ防止法ともいわれる「労働施策総合推進法」が改正され、全ての会社にハラスメント相談窓口の設置と相談員の任命、相談に対して再発防止措置を実施することが義務化されました。
    相談窓口の利用に当たっては、次のような相談前の準備をして臨むことをお勧めします。
    ⑴相談日、時間の予約をしましょう。予約の際に要望事項も伝えます。
     ・女性(または男性)相談員を希望、匿名で可能なのか等。
    ⑵相談したい内容を、5W1Hでまとめましょう。
     who(誰に),what(何を),when(いつ),where(どこで),why(なぜ),how(どのようなことをされたのか)。
     自分が不愉快だと感じたこと(ハラスメント行為だと)を、順序だててまとめましょう。
    ⑶誰かに相談したのであれば、どのようなアドバイスを受けたのか、についても記録しましょう。証拠になるのがあれば、準備します(メール、手紙、録音など)。
    ⑷ハラスメント行為者に対しての要望をまとめておく。
     ・相談員に話を聴いてほしい、調査してほしい、指導してほしい、不快な思いをした、行為を止めてほしい、・別の部署へ異動してほしい等。
    このような準備をすることで、相談者自身も相談したい内容が整理されてきます。
    ハラスメント防止のためには、一人ひとりが我慢せずによい職場作りに向けて相談することが重要です。
    外部相談窓口として、沖縄県女性就業・労働相談センター、沖縄労働局雇用環境・均等室や沖縄県社会保険労務士会などがあります。

  • Vol.31 有期雇用社員でも育児休業がとれますか

    質問

    有期契約社員として入社して1年になりますが、この度今年12月に出産予定になりました。雇用期間は来年の3月末までですが、有期雇用社員でも育児休業がとれますか。また休業期間はいつまでになるのでしょうか。

    ポイント

    ・令和4年4月1日に、育児介護休業法が大きく改正されました。
    改正後は、育児休業をすることができる有期雇用社員の範囲は「育児休業申出の時点で、子が1歳6か月に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでない」者とされています。
    この条件を満たす場合、有期雇用社員も原則として育児休業を取得できますが、会社が「育児休業の対象者を限定する労使協定」を結んでいると、育児休業の取得対象とならないこともあります。

    解説

    ポイントに記載したとおり、労使協定がある場合、会社は以下の有期雇用契約者が申し出た育児休業を拒むことができます。
    ①入社1年未満の社員
    ②育児休業申出の日から1年以内に雇用契約が終了することが明らかな社員
    ③1週間の労働日数が2日以下の社員
    自社で、このような労使協定が締結されているかどうかを確認してみましょう。

    会社で労使協定が締結されていたとしても、相談者の場合、①の「入社1年未満」はクリアしています。問題は、②の「申出日から1年以内に雇用契約の終了が明らかかどうか」という部分ですが、会社から明確に「雇用契約の終了」を知らされていなかったり、または契約書の更新の記載が「更新することがある」になっている等、宙ぶらりんの状態であれば、更新の有無も含めた雇用期間の満了日を早めに会社に確認しましょう。

    育児休業は、原則として子が1歳を迎えるまでの休業です。社員の職場復帰を前提とする制度ですが、有期社員の育児休業期間が「雇用期間満了まで」とされるような場合もあります。会社の育児休業制度を早めに確認し、計画的に行動できるよう準備をしておきましょう。また、復帰を見込む場合、育児休業終了後も働く意思があることを会社に明確に伝えるとともに、責任をもって休業日までの仕事を進めることが大切です。

  • Vol.30 LGBTとハラスメントの関係について

    質問

    最近、LGBTについて、社内で話題になることがあります。
     職場にも、LGBTではないかと感じられる社員もいますが、そのことについて、「うっかりするとハラスメントになることがある」と言われました。なぜ、それがハラスメントになるのか、また、どのように対応すればよいかについて、教えていただきたいです。

    ポイント

    ・LGBTとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとしても使われることがあります。

    解説

    日本におけるLGBTの割合は、現在では約3%〜10%と言われています。
    LGBTとハラスメントの関係では、次のことを理解しておく必要があります。
    ⑴ カミングアウト…自らの性のあり方を自ら誰かに話すこと
    ⑵ アウティング…本人の性のあり方を、同意なく第三者に暴露すること
    ⑶ ゾーニング…性的指向と性自認の個人情報の共有範囲をコントロールすること
    ハラスメントの関係では、自ら性のあり方を誰かに話す、カミングアウトは自分らしくありたいことの表現とする人がいます。ただ、
    ・人格を否定するような言動は、「精神的な攻撃」当たります。
    ・⑵のアウティングは、「個の侵害」にあたります

    性的指向(どんな性に恋愛感情を抱くのか、どんな性に性的感情を抱くのかといった要素のこと)、性自認(自らが認識している性のこと)、を理由に仕事から排除した場合も、パワハラに該当するとしています。
    LGBTは、病気ではないため、治すということにはなりません。ただ、少数であるため、一般的に違和感を持つ人は少なくありませんが、他の社員と同じような自然な対応で接するようにして下さい。
     職場での配慮として、男女共用の個室トイレや多目的個室トイレなどの設置、また「だれでもトイレ」などの利用しやすいネーミングの工夫も必要でしょう。

  • Vol. 29 退職後の傷病手当金と失業保険

    質問

    心療内科に通院しながら働いていましたが、2か月前から休職となりました。
    現在は傷病手当金を受け取りながら休職を続けています。傷病手当金は1年6か月まで受け取ることができると聴きましたが、退職後の傷病手当金を受け取る条件と 失業保険はどのようになるのか教えて下さい。

    ポイント

    退職後に傷病手当金を受給する要件、療養中の失業給付延長の要件は次のとおりです。
    ① 退職日までに1年以上、継続して健康保険に加入していること。
    ② 退職時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
    ③ 失業給付は、病気療養で労働することができない場合は、4年を限度として受給期間を延長する制度がある。

    解説

    療養のために休職しても経済的不安がストレスになり、回復に支障をきたしてしまいます。そのために傷病手当金は、条件を満たせば退職後も受け取ることができます。
    1. 退職後の傷病手当金受給要件は上記のとおりですが、傷病手当金は、通算して1年6カ月まで受け取ることができますが、傷病手当金と失業給付は同時に支給されることはあり得ません。
    傷病手当金は、会社に在籍している間は、社会保険料の支払が必要ですので、毎月会社の指定口座への振込が就業規則に定められていることが多いです。会社に確認しましょう。

    2.失業給付は、失業、「労働の能力を有する者」が職業に就けない状態にあることが支給要件なので、療養中で仕事につくことができない状態では、失業給付は受け取れません。ただし、失業保険には原則として離職日の翌日から1年間という受給期間がありますので、長期間病気やケガが治らない場合は、受給期間を延長できる制度(4年を限度)があります。
    失業給付の受給期間を延長する要件は次のとおりです。
    ① 受給期間内に病気やケガにより、引き続き30日以上職業に就くことができない期間があること
    ② 本人が申出をすること 
    延長の期間などについては、ハローワークで相談するのがよいでしょう。
    十分に療養して復職できるよう制度の利用をお勧めします。

  • Vol.28 会社からの昇進打診を断ることができますか

    質問

    正社員として勤務15年になります。毎年4月に昇進・昇格の発表がありますが、今回上司から、係長昇進についての打診がありました。
    仕事や職場は充実していますが、現在小学生の子育て中で、係長の業務責任を果たせるのか不安があります。
    会社員として、会社の命令を断ることができるのでしょうか。

    ポイント

    ・会社命令であっても断ることはできますが、会社が昇進に対して、どんな役割を期待しているのかを確認することが重要です。
    ・そのうえで、現状では昇進を引き受ける状況でないことについて上司に説明し、
    相談することが必要です。

    解説

    会社は、業務の都合や将来の人材育成を検討して昇進の人事を行います。これまでの働きぶりなどを評価して人選していると思われます。人事異動は会社の命令でもあり、就業規則に「正当な理由がなければ拒むことはできない」と記載されることがあり、引き受けることが前提になっていますが、断ることができない訳ではありません。断る前に、せっかく会社が適任だと判断して昇任を打診していますので、「期待する役割や業務内容の責任範囲」を確認して判断するのが良いと思います。

    昇進したくない一般的な理由として
    ① 現場で仕事することが好き ②部下の管理やマネジメントに自信がない ③家庭と管理職業務両立が難しい などがあります。

    昇進を断るデメリットとして
    ① 給料が上がりにくい ②後輩の上司の部下になることがある ③家庭環境の変化で管理職の条件ができたときに再度機会を得られない ④後輩への影響(昇進を断る前例となる) などがあります。

     繰り返しますが、会社命令であっても、昇進を断ることはできますが、せっかくの機会ですので、「どの範囲ならできる」「すぐには引き受けられないが時期が来たら引き受ける」「もう少し経験を積んでから」など、会社と充分に相談して判断することをお勧めします。

  • Vol.27 働きながら不妊治療を続けたい

    質問

    現在、働きながら不妊治療を続けています。通院のために、仕事を休むことも多く、職場の上司や同僚に気を使います。上司は理解を示していましたが、期間が長くなると、同僚からの協力が得にくくなっているように感じます。
    不妊治療で利用できる行政の支援策や会社の取り組みなどについて教えてください。

    ポイント

    不妊治療支援のポイント
    1. 国の方針で不妊治療も保険適用されます。(令和4年4月から)
    2. 厚生労働省で「不妊治療マニュアル」「不妊治療ハンドブック」を発行しています。
    3. 不妊治療の職場環境を整備する企業に「不妊治療両立支援コースの助成金」が利用できます。

    解説

    仕事をしながら不妊治療を続ける多くの人は、両立できずに仕事を辞めたり、もしくは不妊治療をやめた、雇用形態を変えた等、途中で断念する人も少なくありません。理由として「精神面・体力面で負担が大きい」、「通院のために職場を休むことが多い」、「経済的負担が大きい」となっています。相談のように不妊治療は、通院時間や費用とともに職場の協力が必要になります。

    1. 国の支援策としての、①妻の年齢が43歳未満であること。②1回30万円 ③1子ごとに6回まで(妻が40歳以上43歳未満は3回まで)が、令和4年4月から保険適用となりました。

    2. 事業所への支援としては、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)や働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)があります。企業は「働きやすい職場づくり」によって不妊治療者の支援を行っています。例として、不妊治療のための半日年休や時間年休の導入、テレワーク制度、長期休職制度、不妊治療で退職した社員の再雇用制度などあります。また、職場への協力依頼として、医師から事業主へ「不妊治療カード」を発行してもらうこともできます。
    このような支援策を利用するためには、職場の理解と同僚の協力が必要です。あわせて企業と労働者が協力して、制度を利用しやすい風土づくりも重要です。

    「不妊治療専門相談センター」(県の看護協会内)への相談もお勧めです。一人で悩まずに、支援策を活用しながら会社への協力依頼も行ってみましょう。

  • Vol.26 産後パパ育休の創設について

    質問

    今年の4月と10月に育児休業の制度が変わって、男性も育児休業が取得しやすくなるって聞いたのですが、それはどんな制度ですか?また、その制度を利用して休んだ時には給付金とかもらえるのですか?

    ポイント

    1. 「産後パパ育休(出生時育休制度)」は、対象の期間は子の出生後8週間以内で4週間まで取得可能な制度です。しかも、1回だけでなく分割して2回の取得も可能で、労使協定を締結していれば休業中に就業する事も可能な便利な制度です。
    2. 産後パパ育休を取得した場合には、出生時育児休業給付金が受けられるので、無給の場合と違って仕事と育児の両立がしやすい制度となっております。
    3. 男性の育児休業取得率は少しずつ増えてきましたが、まだ13%代と女性の育児休業取得率に比べてとても低く、日本は遅れていると言われています。その改善のためにも育児・介護休業法改正の一環として、今年の10月に産後パパ育休制度が創設されて、男性も仕事と育児を両立できるようにした制度が創設されました。

    解説

    1. 産後パパ育休の「育児休業給付金」の支給要件としては、休業開始前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上(ない場合は就業時間数が80時間以上)ある月が12カ月以上あること。また、休業期間中の就業日数が、最大10日若しくは時間数が80時間以下であること。

    2. 労使協定を締結している場合に限りますが、休業中に勤務先の仕事ができます。ただし、就業可能時間や仕事内容は労働者が合意した内容に限り日数等は上限があります。

    3. 月の末日が育児休業期間中である場合若しくは同一月内で14日以上の育児休業を取得(開始・終了)した場合には月給にかかる厚生年金保険料と健康保険料が免除されます。

    ❀今回の改正を利用して男女で協力して育児に参加しましょう。

  • Vol.25 コロナ関連の休暇・休業について

    質問

    新型コロナについて、職場でも、コロナ感染した、家族に感染者が出た、濃厚接触者として疑いがある等で社員が休業することがあります。体調不良で休むことはしようがないと思いますが、休んだ場合の賃金はどうなるのでしょうか。法律で定めがあるのでしょうか。

    ポイント

    1. コロナ関連休業は一般的に、①業務に起因する場合は労災保険適用、②個人的な傷病の休業は健康保険適用、③自己都合で休む場合は、有給休暇または会社の規則に基づき病気休暇や休職制度を利用します。①②は法律の定めがあります。
    2. 今回のように新型コロナで休む場合は、各会社でルールを決めていることがありますので、下記の事例を参考に自社の規則などを確認してください。

    解説

    1. ワクチン接種の休暇
    ・ワクチン接種日1回目を特別有給休暇か自己休暇で取得させています。
    ・ワクチン接種2回目の接種後、副反応が出た場合は、〇日間を特別休暇とする。
    期間は政府が定める期間。
    注意点としてワクチン接種は強制したり、接種しない社員に対して差別的取り扱いは禁止されています。

    2. PCR検査について
    ・得意先訪問など、業務の必要性で会社が検査を命令した場合、費用は会社負担。
    ・本人希望の場合は、自己負担としています。

    3. 感染者、濃厚接触者について
    ・感染者が出た場合、拡大を防ぐため社内消毒や社員の健康状況確認を優先します。
    ・業務上で感染し休業した場合…労働災害保険を申請します。
    ・自己都合で感染し休業した場合…傷病手当や有給休暇を利用します。
    ・濃厚接触者で自宅待機の場合…会社命令の出勤停止は、休業手当支給または自己の休暇を利用します。

    その他、感染拡大防止のために、お客様対応のルール化、日々の社員の健康チェックの実施も大切です。また、業務に支障をきたさないように、在宅勤務や時差出勤、交代勤務等を実施しています。
    法令の定めはなくても、経営者も社員も協力してコロナ感染の拡大防止に取り組みましょう。
    ※新型コロナウイルス感染症に関する最新情報はご自身でもご確認ください。

  • Vol.24 介護休暇について

    質問

    最近職場で、介護休暇を利用したいと申し出た社員がいました。
    2021年1月から、介護休暇は時間単位でとれるということも耳にしましたので、介護休暇について教えて下さい。

    ポイント

    1. 介護休暇とは、家族が要介護状態であることが前提で有給休暇以外に取得できる休暇です。
    2. 介護休暇を利用できるのは、雇用期間が6か月以上の全ての従業員です。
    3. 介護休暇の日数は、対象家族が1名の場合は1年度につき5日、対象家族が2名以上の場合は10日までです。時間単位で取得することもできます。
    4. 介護休暇中の賃金の有給か無給かは、各社の規程で定めます。(法律の定めはありません)

    解説

    「介護休暇」とは、社員が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族の介護や世話をするための休暇で、93日の介護休業とは別の休暇です。
    介護休暇を利用できる社員の要件は、次の通りです。
    1. 家族が2週間以上の要介護状態にあること
    2. 対象家族は、父母、配偶者、子(含む養子)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫。
    3. 雇用期間が6か月以上あること。パート、アルバイト社員でも利用できます。(日雇い労働者、労働時間が週2日以下は労使協定で取得できないこともあります。)
    4. 取得できる日数は、有給休暇以外に対象家族が1名の場合1年度で5日、2名以上は10日。時間単位で取ることも可能です。
    5. 賃金については、有給か無給かは会社の規程によりますので、就業規則で確認しましょう。介護休暇には、給付金はありません。

    介護休暇は、介護をしながら働き続けられるように制定された制度です。通院の付添いや介護サービスの手続きや打合せなど、介護で休暇が必要になった場合に利用できます。
    事業主は介護休暇の申し出を断ることはできませんので、自社の制度について事前に確認しておくことも必要です。

  • Vol.23 新型コロナに関する休業手当金について(令和3年9月版)

    質問

    令和2年3月頃から新型コロナウィルス感染症の影響で、勤務日数が減っています。
    給与は一部支払われていますが、上司は「給与全額ではないが、休業手当金として支払っている」とのことです。休業手当金というのは、支払い基準が法律で定められているのでしょうか。また、休業する日数に上限があるのでしょうか。
    マスコミ報道で、雇用調整助成金は会社が申請すれば会社に支給されると聞いています。直接、従業員に支払う助成金はないのでしょうか。

    ポイント

    1. 休業手当金は、使用者の責任による事由で休業させた場合、休業期間中の従業員に、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないものです。(労基法第26条)
    この際の休業とは、働く日(労働日)に「働く意思と能力があるが労働することができない状態」をいいます。本来の労働する必要のない休日や病休、自己都合で取得する有給休暇などは該当しません。
    2. 休業手当は、平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。100分の60以上であれば上限はありませんし、休業日数についても上限はありません。
    3. 雇用調整助成金は、従業員を休業させて、休業手当を支払った場合に事業主が申請するものです。また、休業した従業員に休業手当の支払いが困難な場合には、従業員が直接申請できる「休業支援金・給付金」があります。

    解説

    1. 今回の新型コロナ感染症の拡大感染防止のため、多くの企業で活動を制限し、従業員の出社日数や勤務時間数を減らしたり、在宅勤務などを実施しています。この休業が使用者責任なのか議論はありますが、国は従業員の雇用を維持する企業に雇用調整助成金で支援することにし、使用者都合として休業手当金を支払うことを求めています。仕事ができないための休業なので、テレワークや、病気休暇や自己都合で休む場合は対象とはなりません。
    2. 休業手当金は平均賃金の100分の60以上を支払わなければいけません。(基本給ではありません)
    休業手当の支給割合は60%以上であれば使用者が決めることができます。
    3. 休業手当の計算は、1日当たりの平均賃金✕60%以上✕休業した日数で計算します。また、短時間等の時間休業であった場合は、時給✕60%以上✕休業した時間、を支給しなければいけません。

    今回の新型コロナ感染症による影響で、企業も従業員も働く環境が大きく変化しています。国も色々な支援策を設けています。支援策の申請には期限もありますので、相談センターや関係コールセンター等に確認して、早めの利用で厳しい環境を乗り越えましょう。

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