労働相談Q&A

社会保険労務士キサ子先生が、働く人と雇用する側の労働問題にお答えします。

Vol.4 人を雇うときのポイント

これまで1人で会社を経営してきました。
業務が忙しくなったので、2人雇う予定です。1人はフルタイムで、1人はパートで契約したいと思います。初めて採用するので、雇用管理の注意点について教えてください。

ご相談でのポイントは5つです。

  1. 雇用契約の期間(無ければ「期間の定めなし」と記載する)
  2. 働く場所、仕事の内容
  3. 始業及び就業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換(交代勤務の場合の交替日、交替順序等)に関する
  4. 賃金の決定、計算及び支払いの方法、締切り日、支払い日
  5. 退職に関する事項(解雇の事由、定年年齢)

雇用契約書(労働条件通知書)は、必ず発行しましょう。

労働相談に寄せられる内容は、ほとんどが事業主と労働者の説明不足が原因と思われます。雇用に関して、事業主が守るべきことの最重要ポイントは、雇用契約書・労働条件通知書を労働者に発行することです。「契約」ですから双方の合意が必要です。
契約はもちろん口頭でも成立しますが、労働の契約は、「使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と記しています。つまり文書で交付しなければいけません。
事業主が提示した雇用契約書の内容を確認して、合意すればそれぞれが署名して契約が成立します。
これは正社員だけでなく、パートやアルバイトの短期間雇用の場合も同じです。雇用契約書はお互いの信頼を確認するものです。
労働相談には、「雇用契約書がない、見てない、説明がなかった」。また、労働者も「請求しなかった、雇用契約書は我が社は作成してない」等が多く双方の理解が十分でないケースが見られます。採用した社員に能力を発揮してもらうためには、雇用関係が安定していること、事業主に対する信頼を築くことが基本です。
後々のトラブルを防ぐためにも、採用時には必ず雇用契約書を作成、配布して、お互いに確認し合うことで、安心、信頼して働ける社会にしましょう。

Vol.3 退職届の承認について

正規社員として勤務して5年になります。会社の就業規則では1か月前に退職願を提出することが定められています。この度、一身上の都合で退職を申し出ました。もちろん退職予定日の1か月前に上司に退職の意思を告げ、翌日に退職届を提出しました。
ところが上司から「次の社員を採用するまで、待ってほしい」と言われ、1か月経過しても退職願いが受理されていません。今後の再就職の準備もしたいのですが、退職願いは会社が承認しないと、退職できないのでしょうか。

ご相談でのポイントは2つです。

  1. 退職は労働者の意思により、効力が発生するため、会社の承認を必要としません。
  2. 期間の定めのない雇用契約については、解約の申し入れ後、2週間(但し、月給制の場合は、当該賃金計算期間の前半に申し入れて下さい。)で終了することとなっており、会社の同意がなければ退職できないというものではありません(民法第627条)

正規社員の場合、期間の定めのない雇用契約になるので、労働者の申し出により2週間を経過すれば退職することができます。
ただし、会社の業務の運営上、就業規則に「退職は1か月前に申し出なければならない」と定められていることがありますが、会社の任意の定めです。今回、「次の労働者を採用するまで、待ってほしい」と言われ、退職願いが保留になっているようですが、法的には強制する根拠はありません。また会社の承認がなければ退職できないものでもありませんので、2週間以上も経過しているのであれば退職は可能です。
しかし、いつまでも保留になるようでは、お互いに今後の予定に支障をきたしますので、上司と相談して退職の予定期限を決めることも必要です。予定期限内で、引き継ぎ文書を上司に提出して、次の人の業務がスムーズにいくように準備できたら出社しなくてもよいということになります。契約期間の定めがある雇用契約の場合は、原則として、使用者は契約期間の満了前には労働者を辞めさせることができない反面、労働者も契約期間中は会社を辞めることができません。ただし、やむを得ない事由がある場合は、各当事者は直ちに契約を解除することができることとされています。
5年間務めた会社ですので、退職もお互い気持ちよく行うよう双方で努力してみて下さい。

Vol.2 懲罰のルールについて

入社して10年になる正規社員です。今回、うっかりミスをして、会社に迷惑をかけてしまいました。
上司から「お客様の信頼を失くした重大なミスだから、処分を検討している。減給になるかもしれない」と言われました。
とても反省していますが、減給となると、どのくらい、いつまでになるのでしょうか。

ご相談でのポイントは2つです。

  1. 減給は労基法で限度が定められています。
  2. 懲戒処分は就業規則上の根拠が必要です。

長年仕事をしていてもミスを犯すことがあります。会社には業務を正しく進めたり職場運営をスムーズにするために、従業員が守るべきルールや服務規律があります。この規律を守らずに業務に支障をきたしたり職場環境を悪化させるなどの行為があった場合に、制裁罰として懲戒処分を行うことがあります。
懲戒処分は、従業員に与える影響が大きいこともあり、特に慎重に行う必要があります。制裁を行うための要件は、①就業規則に定めがあること。 ②懲戒事由と罰則の程度が適正な範囲であること 。③懲戒の手続きが妥当であることです。
会社の就業規則を確認してみましょう。

制裁する場合は、問題となる行為の程度によって処分に違いがあります。懲戒の種類には、一般的に①戒告、②けん責、③減給、④出勤停止、⑤降職・降格、⑥諭旨解雇、⑦懲戒解雇があり、①から順に重い処分となり、会社によってその内容にも違いがあります。
減給については、「1回の額は平均賃金の半額まで、複数回も制裁する際は一賃金支払い期間の賃金総額の1割までが限度」(労基法第91条)と定められています。
そのため1つの事案に対して、何か月にもわたって減額することはありません。
仕事上のミスが発生した場合、ミスや処分だけにこだわらず、今後の再発防止についても具体的な対策を検討しましょう。

Vol.1 上司のパワーハラスメント

私の上司は、帰り間際に突然仕事を言いつけたり、仕事でミスをすると1時間くらい私を立たせたまま説教したりします。子供の保育園への迎えもあり、とても困っています。
このようなことはパワーハラスメントだと思いますが、直接反論したりするとさらに大声をだしたりしますので、どうしたらよいかわかりません。

ご相談でのポイントは3つです。

  1. パワハラの正しい知識をもつ
  2. パワハラの解決の進め方について、職場の相談体制を確認
  3. 周囲への協力依頼、外部の支援制度の活用
パワハラとは
パワーハラスメント(パワハラ)は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。」です(厚生労働省)
上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間等、様々な優位性を背景に行われるものも含まれます。

パワハラは6つの類型に分類されていますが、現実はその他の事例もあります。

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

現実には、上司から指導・教育であると言われることが多く、指導とパワハラの判断が難しい面もあります。判断基準は「業務の適正な範囲か」「職場環境を悪化させる行為か」です。

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ご相談の場合、「帰宅間際に仕事を与えられる」「何時間も説教される」ことは
業務の適正な範囲と言えるでしょうか。

パワハラヘの対応
パワハラの解決策として、次の職場の体制を確認しましょう。
① 職場ではハラスメントの相談員が任命され、みんなに知らされていますか。
相談員が任命されているか会社に確認しましょう。任命されていなくても総務や人事が担当していることもあります。
② 自分が受けている行為がパワハラかどうか確認してください。
業務の適正な範囲でも、相手への言い方、表現方法も誤解を招くことがあります。乱暴に大声を出すなどは、職場環境を悪化させることになります。
パワハラは身近な上司や先輩・同僚からの行為のため、直接「パワハラやめて下さい」と言いづらい面があります。
一人で対処するより、職場の先輩や同僚に相談することや周囲の協力を得ることも必要です。上司のパワハラ防止とともに、―歩先行く職業人として、上司に「今日の業務予定を教えて下さい。今日中に行う業務がありますか」など先手を打って予防策を講じることもできます。また長時間の説教に対しては上司に影響力のある管理者に相談してもよいでしょう。パワハラは、管理者自身がパワハラの認識がないことも要因となりますので、会社にパワハラ研修を行うよう働きかけて下さい。研修を実施する事は、パワハラ予防策で最も効果的であるという結果が出ています。さらに問題が深刻な場合は、労働局雇用環境・均等室に相談することもできます。

パワハラは、仕事への意欲を低下させるものです。職場の全員が正しい知識をもち、一人ひとりが能力を発揮できるよう職場の改善を取り組んでみましょう。

パワハラは、仕事への意欲を低下させるものです。
職場の全員が正しい知識をもち、
一人ひとりが能力を発揮できるよう職場の改善を取り組んでみましょう。

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